離婚協議書と公正証書について

離婚協議書と公正証書の特徴や違いnotarized document

離婚協議書と公正証書

離婚をする時には、夫婦間で様々な取り決めを行う必要があるのですが、取り決めた内容を書面として残して置かないと、後になってトラブルになったり約束が守られない可能性が高くなってしまいます。

調停や裁判で離婚を成立させたときには、裁判所の書記官が作成する「調停調書」や「判決文」がありますので、法的な効力がある書類を手にすることができます。
それに対して、協議(夫婦の話し合い)で離婚を成立させたときには、そのような書類がないため当事者でして置くことをお勧めします。
この2つの書類には、それぞれに異なる特徴がありますので、よく理解して必要な書類を作成するようにしましょう。

離婚協議書の特徴

離婚協議書とは、離婚時の話し合いで合意した内容を記載しておく書面のことを言います。
離婚時に、口約束だけで慰謝料や養育費の支払いを決めた場合には、後になって約束が守られなかったり約束事が食い違ったときなどに、取り決めた内容を証明することができ無くなってしまいます。このような問題を避けるために、お互いに合意した離婚条件を書面として残しておく必要があります。
離婚協議書には、決められた書式がある訳ではありませんので、お互いの話し合いの結果を書面として残して置くだけのものですが、非常に大きな意味があり後々のトラブルに対して優位な立場を取ることができる場合があります。

離婚協議書は、言ってしまえばただの紙ですが、離婚協議書に離婚時に話し合いで決めた内容を明記することで、当事者はこれを遵守する義務(遵守させる権利)を得ます。
作成が簡単で誰でも作ることができますし、自分たちで作れば費用も掛からないなどのメリットがあります。また、弁護士に既婚協議書の作成を依頼した場合であっても、作成だけであれば5万円前後で作成をして貰えます。
一方で、相手が約束を守らないときであっても、直ちに強制執行手続きが行える訳ではありませんので、裁判所に訴えを提起して裁判所の判決を得る必要があるなど、法的拘束力がないデメリットもあります。

離婚協議書を公正証書化すると、このような判決取得の手続を省略することが可能になります。将来的に養育費などの未払いを防ぎたい場合には、公正証書の作成を行い公文書として残すことをお勧めします。

公正証書の特徴

公正証書とは、法律の専門家である公証人が法律にしたがって作成する公文書のことを言います。
そのため、高い証明力があり債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続き(裁判所が強制的に金銭等を回収する手続き)に移ることができます。

公正証書を作成するには、離婚協議書を作成した後に公証役場に行き、公証人と面談をし作成する必要があります。夫婦で公正証書の原案を確認し、問題がなければそのまま公正証書を作成してもらい、最終確認後に捺印をして公正証書の完成になります。

公正証書を作成すると以下のようなメリットがあります。

  • 公文書になるため証拠としての価値が高い
    公正証書で養育費の支払い金額や支払日について書かれていれば、その内容が夫婦間で離婚前に約束していたものと判断されます。そのため、もし約束した金額が支払われなかった場合、その金額の支払いを回収することができます。
  • 給料や預金を差し押さえる効力を持ている
    公正証書には裁判の判決と同等の効力がありますので、支払いがされない場合には裁判所を通して、給料や預金などの資産を差し押さえることができます。
  • 公証人がチェックをするため誤りがない
    公正証書は、内容を法律の専門家である公証人がチェックすることになります。 そのため、夫婦のみで作る離婚協議書に比較して、内容の確実性が高くなります。

公正証書を作成するには、夫婦が公証役場への出頭が必要なため、それなりの手間が掛かるデメリットもあります。また、離婚相手が、公正証書の作成になかなか応じてくれない場合もあるでしょう。
金銭の問題が慰謝料や財産分与のみで、既に支払いを受けているケースであれば後々トラブルが起こりにくいので、公正証書を作成するメリットは少ないかもしれません。それに対し、養育費などを数年に渡り受け取るお金がある場合や財産分与をまだ受け取っていない場合には、これらを確実に受け取るために公正証書を作成するメリットがあります。

公正証書は、資産の差し押さえができる効力があるため、相手に対して支払の義務があることを強く意識させることができます。そのため、強制的に回収できるだけでなく、未払いになるリスクを減らすことができる場合があります。

公正証書の作成必要な費用

公正証書を作成する公証役場は国の機関となります。
公証役場の各利用者は、公正証書の作成に対し公証人手数料を負担することが法令で定められています。公証役場は公的な機関であるため、手数料はそれ程高額になる訳ではなく、金銭的な負担は少なく作成することができます。

公証人手数料は、公正証書で契約する内容(金銭の支払い額など)に応じて計算される仕組みになっており、契約金額の総額が大きくなれば、手数料額が階段状に高くなっていきます。
離婚契約では、財産分与、慰謝料、養育費などの支払い契約額の総額をもとに評価されます。
養育費を支払うだけの一般的な契約の場合には、養育費の年額100万円を15年間受け取る内容だと仮定すると、15年間の総額は1500万円となりますので23,000円の手数料で作成ができます。
財産分与や慰謝料などの支払いも公正証書に加える場合には、合計金額により手数料は高くなりますが、1億円以下の契約内容であれば43,000円の手数料で作成ができます。この金額の手数料で支払いが受けられる可能性が高くなるのであれば、公正証書を作成するメリットが大きいと感じる方は多いのではないでしょうか。

公正証書の作成は、夫婦で公証役場に行き作成することができますが、これらの手続きを弁護士に依頼することも可能です。この場合には、別途弁護士費用が必要になります。

公正証書の作成に必要な手数料の一覧
法律行為に係る証書作成の手数料
目的の価格 必要な手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 43000円に5000万円までごとに、13000円を加算
3億円を超え10億円以下 95000円に5000万円までごとに、11000円を加算
10億円を超える場合 249000円に5000万円までごとに、8000円を加算

離婚協議書と公正証書の作成方法

離婚協議書作成の流れ

離婚協議書を作成するには、以下のような手順で進めて行きます。

  • 夫婦で話し合いを行い、離婚する際の条件を決める
  • 話し合った内容を離婚協議書にまとめる
  • 離婚協議書を公正証書にする(公正証書にする場合は、離婚協議書を公証役場に持っていくとスムーズに進みます。)

公証役場は裁判所とは異なりますので、判決を出したり揉め事を解消したりしてくれる場所ではありません。そのため、夫婦間の取り決めは、事前に夫婦で決めておく必要があります。
公正証書を作成する場合には、夫婦間の取り決めを離婚協議書として作成し、離婚協議書をもとに公正証書を作成することになります。
どちらの書類を作成する場合であっても、取り決めの内容は当事者である夫婦間で決める必要があります。夫婦の話し合いで取り決めが合意ができない場合には、弁護士に交渉を依頼することも考えてみましょう。

話し合いにより決める内容

先ずは、離婚する相手と話し合いを行い、離婚条件(離婚協議書に記載する内容)を決めていく必要があります。
取り決めを行う内容は夫婦により異なりますが、通常は主に以下のようなものを決める必要があります。

  • 離婚に合意した旨の記載
  • 親権者(監護権者)の指定について
  • 養育費の支払い
  • 財産分与について
  • 慰謝料について
  • 子どもとの面接交渉について
  • 年金分割について
  • 公正証書にするか否か
  • 清算条項について
離婚に合意した旨の記載

夫婦が離婚について合意した旨を記載する必要があります。
その際には、
・離婚届の提出日
・離婚届けを役所に提出する人
を記載する場合もあります。
離婚届け提出までがスムーズに行くようにすると良いでしょう。

親権者(監護権者)の指定について

離婚協議書に、子どもの名前を記載します。
また、子どもの名前の前に、「長男」「長女」「次男」「次女」等記載していきます。
場合によっては、養育方針などを記載することもあります。

養育費の支払い

養育費とは、子どもを育てるのに必要な費用のことをいいます。
養育費には、衣食住に必要な経費や教育費、医療費、最低限度の文化費、娯楽費、交通費など、子どもが自立するまでにかかるすべての費用が含まれます。
離婚協議書には、
・そもそも養育費を支払うか否かの記載
・支払う場合には、その金額を記載
・養育費を支払う期間(子どもが何歳になるまでなど)
・支払い方法(短期間に集中してまとまった金額を受け取るか、1回に受け取る金額は少なくても長期に渡って支払うかなど)
などを記載するようにしましょう。

財産分与について

財産分与とは、婚姻生活において、夫婦が協力して増やした財産や維持した財産を清算し、夫婦それぞれの個人財産に分けることをいいます。
離婚協議書には、
・財産分与の対象となる財産
・現金や不動産など財産分与として譲り渡すもを具体的に記載
・財産分与の支払いをする期限
・支払い方法(一回払いか分割、現金か振込など)
などを記載します。

慰謝料について

慰謝料とは、精神的苦痛を受けた場合に、苦痛を与えた側から受けた側に対して支払われる費用をいいます。
離婚原因によっては、慰謝料を請求することが出来る場合があります。(浮気や不倫による不貞行為やDVを受けていた場合には慰謝料が認められる可能性は高いと考えられます)
・慰謝料を支払うか否かの記載
・支払う場合はその金額を記載
・支払期日の記載
・支払い方法(一回払いか分割、現金か振込など)
などを記載します。

子供との面接交渉について

面会交流とは、離婚や別居で子どもと離れて暮らす父親や母親が、定期的に子どもと会って交流することをいいます。
面会交流は親権を持たない親に認められている権利ですので、正当な理由なく拒むことはできません。
離婚協議書には、
・面会交流を認める頻度(月2回の頻度や年2回の1泊程度の宿泊など)
・面会交流の日時
・1回あたりの面会の時間
・面会交流を実施する方法の取り決め
などを記載します。

年金分割について

年金分割とは、結婚している期間に支払った保険料は夫婦が共同で納めたものとみなして、将来の年金額を計算するというものになります。
厚生年金と旧共済年金が財産分与の対象になり、例えば夫の扶養に入っていた期間がある場合には、その期間に夫の支払った年金の最大で半分までを、妻が支払ったものとして将来受け取ることができます。
国民年金は個人が加入する年金であり、夫婦の共有財産ではありませんので分割分を受け取ることはできません。

公正証書にするか否か

公正証書とは、法律の専門家である公証人が法律にしたがって作成する公文書のことです。
公正証書は高い証明力があり、養育費などの支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで、直ちに強制執行手続きに移ることができます。
離婚協議書を公正証書にする場合は、離婚協議書に強制執行について記載することにより相手が金銭債務を履行しないときは、財産を差し押さえる強制執行が可能となります。

清算条項について

清算事項とは、離婚などの際、決定された請求権以外の支払いが、お互いに一切生じないことを確認する文言のことです。
つまり、「離婚協議書に書かれていないものは一切払いません」という宣言をお互いが認める一文として記載します。

離婚協議書は夫婦で作成して捺印を押せば効力がありますが、法的なアドバイスを頂きながら弁護士とともに作成することも可能です。
また、相手が話し合いに応じない場合や、話し合いがストレスに感じる場合には、これらの交渉を弁護士に依頼することも可能です。
弁護士が作成することで効力が強くなる訳ではありませんが、ミスが無い離婚協議書が作成できるメリットがあります。

離婚協議書の雛形

下記より離婚協議書の雛形(サンプル)をダウンロードすることが可能です。
各種の取り決めや子どもの人数などにより、変更する必要がある場合があります。ご自身の状況に合わせて変更を行い、項目の漏れが無いかを確認し注意してご利用ください。
※離婚協議書のサンプルを利用したことで発生した問題については、当社では一切の責任を負いません。ご理解の上でご利用ください。

離婚協議書 サンプル(PDFファイル)
離婚協議書には決められた書式はありませんので、離婚する夫婦で自由に作成することができます。当探偵事務所でサンプルを作成してみましたので、必要な項目の追加や修正を行ってご利用ください。

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