面会交流権を解説 拒否できない理由と制限できる条件

面会交流権を解説visitation rights

子どもと面会交流する権利

面会交流権

未成年の子どもがいる夫婦か離婚をするときには、父親か母親の一方を「親権者」と決めなければ離婚ができません。
しかし、親権者とならなかった親も子どもの親に変わりはなく、離婚後も親子関係は継続しさまざまな権利や義務も継続します。
親の権利の一つに面会交流権があり、親権を持たない親であっても子どもと面会交流をする権利があります。また、面会交流権は子どもが親権を持たない親と交流をする、子ども権利という側面も併せ持っています。

離婚をして親権を持たない親であっても会いたいと思う気持ちは自然ですし、親子の面会が「子どもの福祉」にも寄与すると考えられています。このような理由から、面会交流権は法律で認めている権利であり親権者は正当な理由なく拒めません。

面会交流権の言葉に聞き覚えがある方も多いと思いますが、面会交流権がどのような意味を持つのか理解できている方は少ないと思います。
離婚後の子どもとの面会交流権を紹介します。

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面会交流権の基礎知識

面会交流権とは、離婚やその他の事情で親子が離れて暮らしているときに、親子が互いに面会をして交流をする権利です。
面会交流権は、親が子どもと面会交流をする権利だけではなく、子どもが親と面会交流をする「子どもの権利」でもあります。
離婚をして親権を持たない親であっても、親子の関係がなくなる訳ではなく離婚後も親子関係は継続します。そのため、親には子どもと面会交流する権利がありますし、子どもにも親と面会交流をする権利があります。
面会交流が認められている理由として、子どもが健全に成長していくためには両方の親からの愛情を感じられる環境が望ましいからです。
親子が離れて暮らしていても、互いに会ったり連絡を取り関わりを持ち続ける権利である面会交流権を民法が認めており、正当な理由なく親権者は面会交流を拒めません。
面会交流を正当な理由なく果たさない場合には、慰謝料や罰金が認められる場合もありますので注意しましょう。

面会交流権は、離婚をした夫婦だけに認められるのではなく、離婚前の別居期間中の夫婦も面会交流ができます。
また、法律上の親子関係があれば、認知した子どもや養子など血縁関係がない親子であっても面会交流が認められます。
つまり、離婚をして親権を持たない親にも、面会交流権を行使し子どもの成長を見守っていくことができる権利が法律で認められています。

面会交流の目的

両親が離婚をした場合であっても、親子の関係は法律上は変わらず継続します。また、子どもが乳幼児でない限り精神的な親子のつながりがあり、婚姻期間中に築かれた親子の関係は容易に解消できません。
親権者のわがままで面会交流を拒否する行為は、決して子どものためにならないと考えられています。

円満な離婚であれば問題は起こり難いかもしれませんが、離婚した夫婦の関係が良好なケースは少ないと思われます。
浮気、モラハラ、性格の不一致などで離婚した夫婦は、元配偶者の顔を見たくないと感じる方もおり面会交流を拒むケースも出てきます。また、相手に離婚原因があれば仕返しの気持ちで子どもと合わせたくないと考える親もいれば、自分に離婚原因があれば子どもに知られたくないと考える親も居るでしょう。
このような感情は親の一方的な感情であり、子どもの本当の気持ちを理解する必要があります。
子どもにとっては、両親が離婚をした後も双方から関与を受け続けることが、精神面における成長と社会性を身に付けるために役立ちます。
このように、面会交流は親の感情で決めるものではなく、「子どもの福祉」に役立つのかを優先して実施しなければなりません。
元夫婦の間に負の感情があったとしても、子どものために双方ができることをしてあげる努力が必要です。

面会交流の取り決め方法

面会交流は法律で認めている権利ですが、具体的な方法や頻度などを法律で決めている訳ではありません。また、第三者や行政が代わりに決めてくれるものでもありません。
そのため、当事者である元夫婦で話し合いを行い、面会交流の可否、方法、回数、日時、場所などについて取り決める必要があります。
子どもが小さい場合には、親権者の協力がなければ面会交流は事実上不可能ですので、取り決めができていないと面会交流が難しくなります。

夫婦の話し合いで面会交流ができれば問題ありませんが、実際には面会交流の取り決めを拒んだり実施を拒否する親権者も多いようです。
離婚後に面会交流が確実に実施れるよう、夫婦で面会交流の取り決めを行うことが大切です。また、夫婦の話し合いで合意できないときには、調停や審判などの方法も検討してみましょう。

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面会交流を決める時期

面相交流は、子どもが成人になるまでの間であれば何時でも取り決めができます。
そのため、必ずしも離婚と同時に面会交流の取り決めをする必要はなく、離婚をした後でも面会交流の取り決めができます。また、一度取り決めた面会交流の内容であっても後から変更ができます。
ただし、離婚の後に面会交流の取り決めを行うデメリットもありますので、一般的には離婚と同時に取り決めを行います。

離婚後に面会交流の取り決めをしようとしても、相手が話し合いに応じない可能性があります。また、子どもが親権者に気を使ったり親権者の考えに流されてしまい、面会交流をしたくないと言い出してしまう可能性もあります。
離婚前であれば他の離婚条件と引き換えに面会交流の約束ができる場合もありますし、離婚協議書や公正証書などの書面の作成も同時にできます。
離婚前であれば面会交流の取り決めをスムーズに進められる可能性があります。

面会交流の獲得と拒否する方法

面会交流は民法が認めている正当な権利であり、親権者は正当な理由なく面会交流を拒否できません。
面会交流の取り決めをしたにも関わらず果たされないときには、法的手段を利用すれば面会交流ができる場合があります。また、面会交流を果たさないときの罰則を設け実施を担保する方法もあります。

一方で、特定の条件を満たせば面会交流の拒否が認められる場合もあります。
親権者の一方的な感情で面会交流の拒否はできませんが、面会交流が子どもにとって不利益になると判断されれば拒否が認められる場合があります。

面会交流を獲得する方法

面会交流は法律が認めている権利ではありますが、親権者の協力が得られず面会交流が果たされないケースは少なくありません。
面会交流ができない理由としては、元夫婦間で取り決めができていない場合と取り決めをしたが約束が守られない場合があります。
いずれの場合でも、対応次第では面会交流ができる可能性があります。

夫婦の協議で面会交流の取り決めを行う

面会交流は、当事者である元夫婦で取り決める必要があります。
離婚をするときには元夫婦の話し合いで、面会交流の具体的な取り決めをしましょう。
具体的には、主に次の内容を決めます。

  • 面会交流の頻度や回数
  • 面会交流を行う時間
  • 面会交流を行う場所
  • 宿泊や旅行の可否や頻度
  • 電話や手紙などのやり取り
  • 運動会や誕生日などのイベント
  • 祖父母との面会
  • 面会交流ができなくなったときの連絡方法
  • 子どもの受け渡し方法や場所
  • 面会交流に関する費用の負担

面会交流の取り決めが成立したら、離婚協議書を作成し面会交流の内容を書面として残しておきます。
離婚協議書を作成して取り決め内容を残しておかないと、相手が約束をした覚えはないと言い出したときに事実が分からなくなってしまいます。
結果として、子どもと会わせてくれない可能性がありますので、きちんと書類を作成し相手に署名押印を求めましょう。

調停や審判で面会交流の取り決めを行う

夫婦の話し合いで面会交流の取り決めができないときは、調停や審判を利用して取り決めを検討しましょう。
面会交流は法律が認めている権利ではありますが、相手が話し合いに応じなかったり理解が得られないときには果たせなくなってしまいます。
このような場合には、家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てることで解決できる場合があります。
面会交流調停とは、裁判所の「調停委員」が元夫婦の間に入り面会交流の話し合いを行う制度です。
面会交流は法律が認めている権利ですので、親権を持たない親に面会交流にふさわしくない事実がなければ、原則として面会交流が認められる方向で話が進みます。また、あなたとの話し合いに応じない相手であっても、調停委員による話し合いには応じる可能性があります。
調停での話し合いで合意できないときには、面会交流調停が不成立となり裁判所が審判によって子どもに適した判断を下します。
調停や審判で面会交流の取り決め行うと、後で紹介する履行勧告や強制執行の申し立てで有利です。親権者が面会交流を果たさない可能性があるときには、調停を利用して面会交流の取り決めを行いましょう。

調停や審判は印紙代などが必要ですが5,000円前後の少額で利用ができます。
調停は弁護士を利用せず本人で行うことができますが、調停を有利に進めるため弁護士に依頼すると別途弁護士費用が必要です。

取り決めを行ったが面会交流を果たさない

面会交流の取り決めを行っても、親権者が面会交流を果たさないケースは決して少なくありません。
このような場合には、家庭裁判所から「履行勧告」をしてもらい面会交流の再開を求めることができます。
履行勧告は、家庭裁判所から約束を守るよう相手に指導してくれる制度です。裁判所が行う指導ですので一定の効果は期待できますが、相手が指導を無視してしまえば効果が得られません。履行勧告には強制力はありませんが比較的簡単に行えますので検討してみましょう。
履行勧告ができるのは、離婚調停や審判で面会交流の取り決めを行った場合に限られます。調停や審判で面会交流の取り決めを行っていないときには、調停による面会交流の取り決めから始める必要があります。

面会交流を正当な理由なく果たさないときには、民法に反する不法行為に該当し慰謝料が認められる場合があります。
この場合の慰謝料は、金銭の受け取りが最終的な目的ではなく、慰謝料の請求を面会交流に応じさせる手段として利用します。
慰謝料の相場は「数十万円~100万円程度」ですが、親権者が慰謝料の支払いを避けたいと考え面会交流に応じる可能性があります。

もう一つの方法として、「強制執行の申し立て」の利用で面会交流に応じる可能性があります。
強制執行とは、調停や審判に違反したときに財産の差し押さえができる制度です。子どもとの面会は強制執行では強制できませんが、間接的に面会交流を果たすために利用ができます。
強制執行では、面会を拒むごとに一定額の罰金を払わせ続ける間接強制が認められています。この制度を利用し、面会交流を拒むと金銭的な負担が発生すると理解させて面会交流を促す方法です。
面会を1回拒むごとに数万円(5万円前後)の支払い義務を親権者に負わせることで、親権者が金銭を支払いたくないと考え面会交流に応じる可能性があります。この支払い義務には法的な拘束力があり、給料や預貯金を差し押さえができますので相手に支払い義務を強く意識させられます。
ただし、お金を払ってでも面会交流をさせたくないと考えたり、お金を持っていなければ支払いができませんので効果がない場合もあります。

最終手段としては、相手が親権者として不適切な事実を立証し、親権者の変更を裁判所に求める方法があります。
ただし、親権者の変更を裁判所が認めるにはそれ相応の理由が必要です。また、親権者が変わることに対する子どもの負担も考えなければなりません。
親権者に子どもの親としてふさわしくない事実があるときには検討してみましょう。

面会交流が拒否できる場合

面会交流が子どもにとって不利益と考えられるときを除き、原則として面会交流は拒否できません。
親権者に浮気などの離婚原因があるときには、事実を子どもに知られたくないと考え面会交流を拒否する人がいます。また、元夫婦の関係が険悪になっていれば面会交流をさせたくないと感じる人もいるでしょう。
しかし、このような理由は親権者の一方的な都合であり「子どもの福祉」とは考えられず面会交流が拒否できる正当な理由には当たりません。

民法では協議離婚でも調停や訴訟による離婚でも「面会交流の方法を決めるように」と定めています。
これは、親の都合ではなく子どもの権利を保障する側面が強く、民法第766条でも面会交流は子の利益を優先するようにと定めています。面会交流をさせたくないと感じる親権者も少なくありませんが、面会交流は法律で認めている権利であり正当な理由がなければ拒否できません。

ただし、面会交流は子どもの権利を保障する要素が強いので、面会交流が「子どもの福祉」に合致しないと裁判所が判断すれば面会交流の拒否が認められます。
具体的には、以下のようなケースでは面会交流の拒否が認められる可能性があります。

  • 子どもが面会交流を拒否している
  • 子どもを連れ去る可能性がある
  • 子どもを虐待する恐れがある
  • 親権者の悪口を子どもに言う
  • 面会交流をしないことに双方が合意している
  • その他、子どものたまにならないと考えられる場合
子どもが面会交流を拒否している

別居した親と「会いたくない」と子どもが明確に意思表示をしている場合には、面会交流を拒否できる可能性があります。
親権者が子どもが拒否していると伝えるだけでは説得力に欠けますが、調査官による調査の中で子ども本人が明確に面会交流を拒否していると明らかになれば、子どもの意思が尊重されることが多いようです。
一般的には、15歳以上の子どもが面会交流を明確に拒否をしている場合に認められる可能性があり、10歳以上であれば判断の際に大きな要素となるようです。
一方で、子どもの年齢が低いほど子どもの意思は尊重されない傾向があります。これは、両親の不和や面会交流の意味について、理解できる年齢ではないと考えられるからです。
また、面会の拒否とは異なりますが、受験や部活動など子ども自身が面会交流よりも優先したいものがあるときには、面会交流の頻度を少なくするなど変更が認められる場合があります。

子どもが親権を持たない親との面会を拒否するように仕向け、元配偶者の悪口を子どもに吹き込む人がいるようですが、このような行為は子どもの教育や成長を考えても決して好ましくありません。
親権を持たない親も子どもにとっては実の親であり、両親の不仲は子どもにとってつらいことです。面会交流をさせたくない親権者のわがままが、結果として子どもを苦しめないように注意しなければなりません。
親権者は、元配偶者に対する悪感情の問題と親子の問題を切り離して考え、自分の都合に合うように子どもの感情をコントロールしない配慮が必要です。

子どもを連れ去る可能性がある

親権を持たない親が子どもを連れ去ってしまうと、子どもの生活環境が大きく変わり心身の安定を損なう恐れがあります。
離婚前に子どもを連れ出して別居をしていたり子どもを連れ去ろうと強硬な姿勢を見せたなど、子どもを連れ去る恐れがあると判断されれば面会交流を拒否できる場合があります。

子どもを虐待する恐れがある

子どもへの虐待は子どもの健やかな成長を阻むと考えられています。
面会交流中に子どもを虐待する恐れがある、過去に子どもを虐待していた、過去の虐待により現在も子どもに精神的なダメージがあるときには、面会交流が制限される場合があります。
ここで言う虐待とは、暴力による虐待だけでなく言葉による精神的な虐待も含まれます。

親権者の悪口を子どもに言う

親権を持たない親が、親権者の悪口を言ったり子どもに対して洗脳する行為が認められるときには、子どもの生活環境に悪影響があると判断され面会交流が制限される場合があるようです。
これは、子どもが親権者に不信感を抱く言動は子どもの福祉に反すると考えられるからです。
もちろんですが、親権者が親権を持たない親の悪口を子どもに言う行為も、子どもの福祉に反する行為であり行ってはいけません。

面会交流をしないことに双方が合意している

面会交流は必ず行わなければならないものではありません。
離婚した夫婦の双方が合意しているのであれば、面会交流を行わない決定をしても法律上の問題は発生しません。
ただし、親権を持たない親が時間の経過や生活環境の変化で考えが変わり、後に面会交流を求めてくる可能性があります。また、子どもが成長すれば親権を持たない親に会いたいと思う子どもの気持ちは自然であり、子どもの意思を尊重することも親権者の責任です。

その他、子どものためにならないと考えられる場合

その他にも、子どもの福祉の観点から面会交流がふさわしくないと判断されれば拒否できる場合があります。
具体的には、以下のような場合に面会交流の拒否が認められる可能性があるようです。
・薬物中毒やアルコール依存症などで子どもに悪影響がある。
・パチンコに連れて行ったり深夜徘徊をさせるなど不適切な行為がある。
・犯罪や不法行為を繰り返してる。
・子どもにお金をせびるなど子どもを利用している。
・万引きやパパ活などを子どもにそそのかしている。
・子どもに性的虐待をしている。
子どもにとって不適切な行為があれば、面会交流の拒否が認められる可能性があります。
どのようなときに面会交流を拒否できるのかは、専門の知識がある弁護士に相談をしましょう。

養育費と面会交流

養育費の支払い義務を果たさないにも関わらず面会交流を希望してくる相手に対して、養育費の未払いを理由に面会交流を拒否したいと考える方も多いです。
しかし、養育費の未払いを理由に面会交流の拒否はできません。
法律上は、面会交流権と養育費は全く異なる問題ですので、この2つの問題は切り離して考えなければなりません。
理不尽に感じる気持ちも理解できますが、養育費の未払いは面会交流を拒否できる正当な理由にはなりません。また、逆の立場で考えれば面会交流が果たされなくても養育費は支払わなければなりません。

法律面以外を考えても、養育費の未払いを理由に面会交流を果たさないのは、子どもの福祉を考えても決して好ましくありません。
養育費の未払いを理由に面会交流を果たさないと、養育費を督促する機会が失われてしまいますし相手も養育費を支払いたくないと感じます。その結果として養育費が未払いになる可能性が高くなってしまいます。
養育費と面会交流は、元夫婦の権利ではなく子どもの権利であることを理解し、元夫婦がお互いに責任を果たさなければなりません。
お互いに義務を果たさない行為は子どもの不利益につながりますし、このことが理由で両親が不仲になることを子どもは望んでいません。
両親は納得がいかない対応や不公平があったとしても、子どもの親としてふさわしい行動を取る責任があります。

養育費の基礎知識 仕組みと金額の相場
養育費ほ基本的な考え方と仕組みや金額の相場を紹介。親権の未払いを減らせる方法も紹介しています。

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