民法と刑法の違いを分かりやすく解説

民法と刑法の違いを解説civil and criminal law

法律には6つの法分野がある

民法と刑法の違いと特徴

私たちが生活するうえでのルールである法律は、日本では現在約2000もの数があり全ての人に守る義務があります。
その中で基礎となるのが、「憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法」の六法です。あるいは、これに行政法を加えて七法と呼ぶこともあります。
多くの方が聞いたことがある「六法全書」とは、これら6つの法典を中心として主要な法令を収録した書籍です。

国民の権利を国家が保障することを定めた「憲法」、私人の間の利害が対立したときに解決するためのルールである「民法」、社会の安全を守るために犯罪や刑罰について定めた「刑法」の3つは、日常生活にも密接に影響する特に重要な法律です。

民法と刑法という言葉は聞き覚えがある方も多いと思いますが、具体的にどのような特徴があるのかを正確に理解している人は少ないと思います。
民法と刑法の性質や違いを分かりやすく解説します。

民法と刑法の基礎知識

民法とは、「私人と私人」の間の権利義務関係を規律する法律です。一方で、刑法とは、犯罪行為をした場合に「国」がどのような処罰を科すかを定めた法律です。
例えば、交通事故を起こしてしまったときには、被害者の車の修理代や治療費を支払う義務が発生します。これは、民法による不法行為にもとづく損害賠償に該当し、加害者と被害者の当事者間で解決しなければならない「民事」の問題であり警察は介入しません。
他方で、交通事故で相手がケガをしたときには、過失運転致死傷罪に該当すれば懲役や罰金などの処罰が課せられます。これは、刑法により国が加害者に対して課す罰則ですので、警察や検察などの行政機関が対処します。また、加害者に罰金が課せられても、このお金は国が加害者に課す罰則であり被害者が受け取ることはできません。
このように、同じ一つのトラブルであっても、刑事の側面と民事の側面の両方を合わせ持つことは少なくありません。

民法について

民法とは、「私人と私人」の間の権利義務関係を規律する法律であり、社会で生きていくためには全ての人が民法を守る義務があります。
売買契約をしたときには、「売主は商品を買主に渡さなければならない」「買主は代金を売主に支払わなければならない」ことは当然ですが、これも民法で定められています。また、結婚した夫婦間には、夫婦は互いに同居する義務、協力する義務、扶助する義務を負います。離婚、養子縁組、戸籍、相続などについても民法で定めていますし、離婚時の財産分与、親権なども民法で定められています。
その他にも、他人の財産や身体に損害を与えたときには、加害者はそれを被害者に賠償しなければならない損害賠償も民法によるものです。
ここで言う「私人と私人」とは、必ずしも個人ではなく法人や行政機関なども対象に含まれます。

民法には罰則はないが損害賠償が請求できる

民法に違反をしてしまったとしても、民法には罰則が定められていませんので刑務所に入ったり国に罰金を払う必要はありません。また、警察権が民事紛争に介入するべきではないとする原則がありますので、警察は民事問題には介入しませんし当然ですが逮捕もされません。
これだけを聞くと、民法に反する行為をしても実害がないと考える方もいるかもしれませんが、民法に反し不当に損害を与えたときには損害賠償を請求される可能性があります。被害者の立場から言えば、民法に反して不当な損害を受けたときには、加害者に対して損害賠償の請求が認められる場合があります。
損害賠償は、車を壊されたときの修理代のような物的な損害に対して認められるだけではなく、精神的に受けた苦痛に対しても慰謝料として請求が認められる場合もあります。
民法に反する不法行為には罰則がありませんので、被害者にとっては納得がいかないと感じる人も少なくありません。そのため、不貞行為などの慰謝料請求は、金銭を得る経済的な目的だけでなく相手へ制裁を与える目的で慰謝料を請求する方も少なくないようです。

民法に関するトラブルの具体例

民法に反する不法行為はさまざまなものがありますので、全てを紹介することは現実的ではありません。
ここでは、探偵に依頼される方に関係があると思われるものを中心に紹介します。

  • 浮気や不倫などの不貞行為
  • 親権や財産分与などの離婚に関する問題
  • 養育費の未払い
  • 貸したお金を返してくれないなどの金銭問題
  • 無視や悪口などの虐め
  • パワハラやセクハラなどの言葉によるハラスメント
  • プライバシーの侵害
  • 不正解雇や給料の未払い
  • 交通事故などの損害賠償
  • 無断キャンセルや料金の未払いなど
  • 過失で物品を壊されたり傷つけられた

このような問題は、民法に反する不法行為に該当する可能性がありますので、損害賠償の請求が認められる場合があります。
ただし、全ての場合で損害賠償が認められる訳ではなく、さまざまなものが総合的に考慮され結論が出されます。
例えば、配偶者が不貞行為を行ったとしても、婚姻関係が破綻した後に行われた不貞行為であれば慰謝料は認められませんし、浮気相手が配偶者のことを既婚者と知らなければ浮気相手への慰謝料は認められません。
損害賠償が認められるかどうかの判断は難しいですので、弁護士など法律の専門家に相談しましょう。

浮気や不倫 慰謝料の条件と相場
浮気や不倫で慰謝料が請求できる条件と慰謝料の相場はこちらのページをご確認ください。
損害賠償が請求できる条件

損害賠償とは、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した場合、損害を与えた者は賠償の責任を負う」と、民法第709条で定められています。
簡単に言うと、所有物を壊されたりケガを負わされたときには、その損害を金銭として請求することが認められています。また、精神的な苦痛を与えられたときにも、その苦痛を金銭として請求することが認められています。
例えば、交通事故などで車を破損させらてたときはもちろん、キャッチボールなどで車や家屋が傷つけられたときでも、損害賠償の請求が認められる可能性が高いでしょう。
また、不貞行為、パワハラ、虐めなどで精神的苦痛が認められるときには、物的な損害がなくても精神的苦痛が認められれば慰謝料として損害賠償が認められる可能性があります。
一方で、加害者に不法行為がないときや故意や過失がないときには、損害賠償の請求は認められません。
例えば、不貞を理由に浮気相手に慰謝料を請求したい場合でも、浮気相手が配偶者のことを既婚者と気付けない関係であれば、浮気相手には故意や過失がないと考えられ慰謝料の請求ができなくなります。
また、野球の試合中に打球が当たったりボクシングの試合中に負ったケガなどは、スポーツなどの正当行為のなかで生じた損害であり加害者に過失がないと判断されることが多く、損害賠償は原則として認められないと考えられています。

不法行為にもとづく損害賠償請求が認められるには、次の5点を全て満たす必要があると考えられています。
・加害者に責任能力がある
・加害者に故意または過失がある
・加害者に違法行為や不法行為がある
・被害者に損害が発生している
・加害行為と損害との間に因果関係がある
損害賠償が認められるかの判断は非常に難しい場合がありますので、弁護士など法律の専門家に相談しましょう。

損害賠償の請求が可能な損害の種類

一言で損害賠償と言っても意味合いが異なる損害賠償があり、次の3種類に分けることができます。

  • 積極損害
    相手の加害行為が原因で、積極的に財産を失わざるを得なかった場合の損害です。
    修理費用、治療費用、入院費用などが該当します。
  • 消極損害
    相手の加害行為がなければ本来は被害者が得られるはずであったが、相手の加害行為によって得られなくなってしまった利益です。
    ケガで仕事できなくなった場合の休業損害、ケガの後遺症などがなければ将来得られるはずだった将来の収入である逸失利益などが該当します。
  • 精神的損害
    不法行為によって被害者が受けた精神的苦痛を金銭に換算したものです。
    一般的には「慰謝料」と呼ばれており、不貞行為、虐め、DV、不当解雇、プライバシーの侵害などで認められる場合が多いようです。

これら全てを合計した金額が損害賠償の総額です。
損害賠償は壊されたものを回復させる費用だけが認められるのではなく、本来であれば得られるはずであった利益や精神的な苦痛でも認められます。
積極損害については比較的金額が出しやすい性質がありますが、消極傷害や精神的損害では金額をどのように算出するのかが難しく、損害賠償の交渉で意見が対立し合意が難しくなる場合があります。

損害賠償の請求方法

損害賠償の請求と聞くと、すぐに裁判をイメージする方も多いかもしれませんが、惨害賠償の多くはお互いの話し合いによる和解で成立しています。
損害賠償の請求では、まずは示談交渉を進め和解を目指す方法が一般的です。和解は、裁判と比べ費用や時間が掛からないメリットがあり、このメリットは加害者にも当てはまりますので和解に応じる可能性があります。
ただし、お互いの関係が険悪になっている場合には交渉が進まず、和解が成立しないケースも少なくありません。
このようなときには、調停での話し合いで合意を目指すことになるのですが、調停は裁判とは異なり判決で損害賠償を決定できませんので、調停を行っても合意が得られない場合もあります。
調停で合意ができないときには、裁判所に損害賠償請求の訴訟を提起し、証拠に照らしながら裁判官の判断を仰ぐ裁判が最後の方法です。
裁判所の判決には法的な拘束力がありますので、相手が納得できない判決であっても従う必要があり必ず結論が出るメリットがあります。一方で、あなたにとって納得ができない判決が出たとしても、判決には従う必要があり受け入れなけれいけません。

調停や裁判は時間や費用が必要ですし精神的にもたいへんですので、できるだけ和解を成立させたいと考える方が多いと思います。
示談が成立しない理由にはさまざまなものがありますが、金額で折り合いがつかない、事実関係を相手が認めない、感情的な面で合意できないの3つが多いようです。
そのため、適正な損害賠償を請求し、事実関係が証明できる証拠を準備し、冷静に話し合いを行うことで示談を成立させられる可能性は高くなります。
また、これらはを全て本人が行わなければならない訳ではなく、交渉を弁護士に依頼したり証拠収集は探偵に依頼ができます。自分一人では解決できないときには専門家に相談をしてみましょう。

協議、調停、裁判離婚の違い
主に離婚をするときの協議、調停、裁判の違いと特徴を紹介しています。離婚時以外でも基本的には同じですので参考になると思います。

刑法について

刑法とは、犯罪行為をした場合に「国」がどのような処罰を科すかを定めた法律であり、被害者に代わって国家権力が加害者の責任を追及する法律です。
日本の法律では、刑事事件の被害者が加害者である被疑者に対して制裁を加える自力救済は禁じられています。また、その刑事裁判を提訴できるのは検察官のみですので、被害者が自ら刑事責任を求めて裁判を提訴できません。
そのため、被害者が加害者に対して刑事責任を求めたいときには、警察などに被害届や告訴状を提出し捜査を委ねるしか方法がありません。

刑法による罰則では被害を救済できない

刑法に反する犯罪行為があったとき、国は加害者に対して罰金や懲役などの罰則を課すことができますが、被害者の経済的損失や精神的苦痛に対しての救済はできません。
つまり、刑法は加害者の刑事責任を追及する法律であり、被害者を経済的に救済するものではありません。
ただし、刑事事件で有罪が確定すれば事件そのものの事実が証明された意味を持ちますので、民事訴訟でも有利な証拠の一つとしての意味を持つメリットがあります。
被害額が少ない窃盗や軽いケガで済んだ傷害であれば、加害者へ罰則が課せられれば納得ができる方もいるかもしれません。一方で、被害額が大きかったり大きなケガを負ったときには、金銭を回収したり治療費を請求したいと考える方も多いと思います。
このようなときには、警察や検察などが行う刑事責任の追求とは別に、民法による損害賠償請求を行う必要があります。この場合、原因となったトラブルは刑事事件ではありますが、損害賠償は民事の問題ですので被害者が対処する必要があります。

刑法に関するトラブルの具体例

刑法に反する違法行為は、多くの方がすでに知っているものも多いと思います。
殺人、強盗、窃盗、傷害、強姦などは刑法に定める代表的な犯罪行為です。
刑法には、その他にもさまざまなものがありますが、全てを紹介することは現実的ではありません。
探偵に依頼される方に関係があると思われるものを紹介します。

  • 金銭をだまし取られたときには詐欺罪に該当する可能性がある
  • 虐めやDVは暴行、傷害、脅迫などに該当する可能性がある
  • 脅しや暴行を受けて金銭を要求されたときは恐喝に該当する可能性がある
  • 合意がないわいせつ行為は強制わいせつや準強制わいせつに該当する可能性がある
  • 故意に物を壊されたときには器物損壊に該当する可能性がある
  • 会社内での金銭問題は横領や背任に該当する可能性がある
  • 無断で敷地内に立ち入ったときには住居侵入に該当する可能性がある
  • つきまといや一方的な連絡はストーカーに該当する可能性がある

このような問題は、刑法に反する犯罪行為と認められる場合があり、刑事責任(処罰)を追求できる可能性があります。
ただし、全ての場合で刑事事件として認められる訳ではなく、さまざまな条件を総合的に考慮して結論が出されます。
例えば、交際相手や好意がある異性に嫌われたくない思いから金銭を渡していたときには、交際相手はあなたから金銭をだまし取っているとは言えず詐欺罪には該当しないと考えられます。一方で、結婚をする気がないのに結婚を約束してお金を受け取っていたり、親の病気などのうそを付いてお金を受け取っていれば、詐欺罪に該当する可能性があるでしょう。ただし、相手に返済の意思があるけれど返済ができていないときには、詐欺罪には該当しないと考えられ立証が難しい問題があります。
刑事事件として認められるかどうかの判断は難しいですので、警察や弁護士などに相談をしましょう。

刑事事件の告発方法

刑法に反する行為が行われたときには、まずは警察に連絡をすることが大切です。
大きな事件に巻き込まれたときにには110番通報をする方が多い思いますが、後日に事件であると認識した場合であっても警察へ連絡をしましょう。警察への相談は事件発生時点でなければいけない訳ではありませんので、後日であっても気付いた時点で相談をしましょう。
ただし、警察に連絡をしたとしても必ず希望する対応が期待できる訳ではありません。被害が軽微なもの、刑法に反するか微妙な場合、親族や知人間で発生した場合では、警察が積極的に捜査を行ってくれなこともあるようです。

このような時には、警察に被害届を提出する方法が一般的ですが、被害届は被害の発生を警察に届け出るものであり処罰を求めるものではありません。被害届が受理されても、実際に捜査を始めるかどうかは捜査機関の判断に委ねられます。
もう一つの方法として、被害者が捜査機関に対し被害の事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示の意味を持つ告訴という手段があります。捜査機関は、告訴を受理すると必ず捜査を開始しなければならず被害届と比べ実効性がある方法です。
ただし、告訴や告発については、刑事訴訟法上は受理する義務は定められていません。一方で、法律ではなく内部規則である犯罪捜査規範では、告訴や告発は受理しなければならないと定められています。そのため、正当な理由がない限り、警察や検察は告訴や告発を受理する義務を負っています。
しかしながら、実際には、警察署は基本的に告訴や告発に対して積極的ではなく、告訴状や告発状を不受理・受領拒否されることがあります。
これは、警察の怠慢という意見もあるかもしれませんが、警察の捜査では証拠収集や調書の作成など多数の人員や膨大な時間が必要ですが、他の重大な事件が発生しても対応できる態勢を維持確保しないといけない理由もあります。そのため、証拠が乏しかったり事件が軽微な場合には告訴を受理してくれない傾向があります。

告訴を検討しているときには、警察署へ事前相談をすることで告訴するうえでの問題点、収集すべき必要な証拠、告訴のために準備すべきことが分かり、スムーズな受理につながる場合があります。
また、複数の被害者がいるときには、できるだけ多くの被害者と一緒に警察署に行くことで受理してもらえる可能性が高くなるようです。その他にも、民事的に解決できない場合には受理されやすい傾向にあるようですので、示談が成立しない理由があるときには伝えるのも一つの方法です。
警察官の職務執行に問題があるときには、監察官や公安委員会などに連絡をする方法もありますが、警察の判断が正しい場合もありますので冷静に判断をしましょう。
これらのを当事者のみで行うのはたいへんですし知識の面で不利になる場合もあります。そのため、弁護士など法律の専門家に相談をし告訴に協力を求める方法もあります。
また、刑事事件として扱うだけの証拠がない理由で受理されないときには、証拠を集めれば受理してもらえる可能性があります。

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