離婚後の養育費の不払いに歯止め
離婚後の養育費の不払いに歯止めNon-payment of child support
養育費の不払いに歯止めを、法制審議会が民事執行法の改正要綱を答申
数十年前は離婚する夫婦は現在よりも少なく、離婚は一部の人だけの問題でもありました。そのため、多くの人には関係がない問題であり議論の対象にならなかったのかもしれません。
しかし、2000年代に入ると離婚する夫婦が増加し、なかでも未成年の子どものいる夫婦の離婚では様々な問題が発生するようになりました。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚した時の問題のなかでも、子どもの養育費や子どもの連れ去りなど子どもに関する問題は大きな社会問題となっています。
しかし、これなの問題に対処する法整備や行政の対応が、必ずしも追い付いていない現状が指摘されています。
養育費の強制執行をスムーズに行える法改正に関する記事が、日本経済新聞に掲載されていますたので紹介します。
裁判などで決まった養育費が支払われず、離婚後の生活に困窮する家庭は少なくない。これに歯止めをかけようと、法制審議会が民事執行法の改正要綱を答申した。不払いを続ける親に対し、強制執行をしやすくする内容だ。
改正の柱は、裁判所が金融機関や自治体などに対し、相手方の預貯金や勤務先の情報提供を命じる規定を設けることだ。
貯金などの差し押さえには、金融機関名と支店名の特定が必要だが、このハードルが高く、泣き寝入りする家庭は多かった。また相手が勤務先を変える場合もあり、給与の差し押さえも難しかった。子どものいる夫婦の離婚は、年間10万件を超えている。両親が離婚しても、子どもの健やかな成長のための費用を負担するのは親の責任だ。見直しは妥当だろう。
ただ、養育費を確保するためには、強制執行以前にすべきことは多い。厚生労働省の2016年の調査では、母子家庭で養育費の取り決めをしているのは43%、実際に受け取っているのは24%だけだ。難しい事情はあるだろうが、きちんと取り決め、公正証書などで残しておくことがまず必要だ。
海外では、養育費の確保に国が積極的に関与する例もある。日本でももっと家族を支援する仕組みを考えたい。今回の答申では、子どもの引き渡しの強制執行についてのルールも盛り込まれた。親権を失った親が子どもを連れ去った場合、その親の不在時に、親権のある親への子どもの引き渡しができるようにする。これまでは明文の規定がなかったうえ、連れ去った親が抵抗すると引き渡しができずにいた。
国境を越えた子どもの連れ去りを解決する国際ルール「ハーグ条約」についても、国内の実施法を同様に見直す。
強制執行の実効性を高めることは、司法判断を尊重するうえで欠かせない。一方、ここでも子どもの利益を最優先に考え、その子の気持ちに十分配慮した運用をしてほしい。
法制審議会が行った民事執行法の改正要綱の答申内容とは
現在行われている法改正の議論では、養育費を受け取りやすくする法改正と親権を持たない親が子どもを連れ去った際に連れ戻せる法改正が議論されているようです。
離婚はあくまでも夫婦間の問題であり、その子どもが不利益を被らない為の法改正は必要ではないでしょか。
養育費の取り決めは当事者である離婚した夫婦間で行う一種の契約です。
そのため、養育費の取り決めができていなければ養育費の受け取りは困難です。養育費の取り決めができていない元夫婦は、まずは養育費の取り決めをしなければいけません。
今回の民法改正案では、養育費の取り決めを行っているにも関わらず、養育費が受け取れていない家庭が受け取りやすくする法改正の議論が行われています。
養育費の未払いが原因の子どもの貧困は社会問題となっており、自治体単位でも後押しする条例の議論が行われています。
しかし、養育費の取り決めを証明できなければ強制執行は困難で、調停証書や裁判での判決、公正証書などで養育費の取り決めを公的に証明できなければ解決できない問題でもあります。
養育費の取り決めを公正証書化すると内容が公的に証明でき、新たな法律ができたときにも実行力が増す可能性が高くなると考えられます。
取り決めた養育費の未払いは離婚した元夫婦(及び子ども)の民事上の問題であり、役場や警察などの公的機関は原則として対応ができませんでした。
そのため、養育費支払者の住所、預金口座、勤務先が分からない場合には、これらの特定を本人が行わなければ強制執行ができずハードルが高い問題がありました。
今回の改正案は、預貯金や給料の差し押さえを容易にする目的で、裁判所からの開示請求があれば金融機関や自治体が情報提供できる規定を設けるようです。
これにより、養育費支払者の資産の差し押さえや給料の差し押さえが容易になり、養育費が未払いになっても養育費を受け取れる可能性が高くなるでしょう。また、養育費支払者が支払い義務を強く意識し、養育費の支払いに応じる可能性が高まる可能性もあります。
ただし、今回の改正案では公正証書が条件となるかは現時点では不明ですが、養育費の取り決め内容が公的に証明できないと対象とならない可能性があります。
将来的に養育費の未払いを避けるため、証明力が高い公正証書の作成は非常に大切です。
養育費の取り決めや公正証書の作成は必ずしも離婚と同時に行う必要はありません。離婚後に時間が経過していても、子どもが成人に達するまでの期間であれば、新たに養育費の取り決めを行ったり公正証書の作成が可能です。
今回の改正では、親権がない親が子どもを連れ去った場合の改正案も盛り込まれています。
もし、親権を持たない親に子どもが連れ去られてしまっても、今までよりも容易に親権者が子どもを取り戻せる内容が議論されています。
なお、本件とは別ですが、離婚した夫婦双方に親権を認める共同親権の議論も行われています。今後の法改正次第では、親権の基本的な考え方が大きく変わる可能性もあります。
離婚をすると元夫婦は法律では他人になり、お互いに扶養や協力する義務はなくなります。しかし、離婚をしても親子関係は変わらず継続します。双方の親が養育費を支払い面会交流を果たす親としての責任を果たす義務があるのではないでしょうか?
養育費とは子どもの養育に必要な費用を親権を持たない親が負担するもので、原則として子どもが成人するまで受け取れます。
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