共同親権の取りまとめ延期

離婚後の共同親権の取りまとめ延期Joint custody postponement

離婚後の共同親権、法制審が試案取りまとめ延期

現在の日本では、離婚後はどちらか一方の親が親権を受け持つ単独親権を採用していますが、離婚後も元夫婦の双方が親権を受け持つ共同親権を導入する議論が行われています。
8月中には中間試案を取りまとめる予定でしたが、賛否が対立し結論の見送りが発表されました。
これにより共同親権の採用がなくなる訳ではなく、今後さらに議論を重ねて最終結論が出されるようです。
離婚後の共同親権、法制審が試案取りまとめ延期に関する記事が、朝日新聞に掲載されていますたので紹介します。

離婚後の「共同親権」の導入などを議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は30日、当初予定していた中間試案の取りまとめを見送った。
賛否が激しく対立する中、現行の「単独親権」の維持と両案併記の形でパブリックコメントにかける予定だったが、自民党法務部会から更なる議論を求める声が上がったことなどを踏まえ、延期を判断したとみられる。

法務省によると、この日の法制審部会では、「法制審は法制審として独立して議論するべき場」「本日取りまとめてもいいのではないか」という意見が出た。
しかし、国民から意見を募るパブコメをより良いものにするうえで「議論が熟していない」との結論に至り、取りまとめは見送ったという。

今の民法では、離婚後は親権を父母のどちらか一方に決める必要がある。
法制審部会は2021年3月から、法改正して共同親権を導入するかについて、賛成派、慎重・反対派が激論を交わしてきた。

出典:朝日新聞 https://www.asahi.com/
2022年08月30日 配信記事

共同親権導入の議論内容

現行の日本の民法では、夫婦が離婚するとどちらか一方の親を親権を受け持つ「単独親権」のみで、離婚後も父母の両方を親権者とする「共同親権」は認められていません。
先進国では離婚後も共同親権を認めている国が多く、離婚後も父母の両方が子の養育に責任を持つべきとの考え方が主流です。日本もハーグ条約への加盟により国際的な価値観に合わせる必要があり、民法を改正し日本でも共同親権を導入する議論が行われています。
しかし、共同親権には問題点も多く指摘されており、意見が対立し中間試案の取りまとめを法制審議会が見送りました。
法制審議会でどのような議論が行われたのかを見ていきましょう。

まずは、共同親権を認めるのか否かの議論が行われたようです。
共同親権は子の利益につながるとの意見が多いようですが、一方でさまざまな問題も指摘されているようです。
問題点としては、一方の親にDVや育児放棄があってもその親が親権を持っていれば対応が取り難くなりますし、両親の意見が対立したときに結論が出せないケースもあるでしょう。
そのため、そもそも共同親権を認めるのか議論が行われているようです。

共同親権が認められない場合には現行通りの単独親権のままですが、共同親権が認められた場合には主に次の2つの形態が議論されてます。
① 共同親権を原則とする(一定の要件を満たす場合に限り、単独親権を認める)
② 単独親権を原則とする(一定の要件を満たす場合に限り、共同親権を認める)
共同親権を認める法改正が行われても、原則として今まで通り単独親権とする案と原則として共同親権とする案もあるようです。
法改正で共同親権を認めても、全ての夫婦で共同親権のみしか認めないのではなく、条件により単独親権と共同親権の選択ができる議論が行われています。

共同親権を認めたときには、監護権をどうするのか議論が行われているようです。
監護権とは、日常的に子どもの世話をする権利ですので、一般的には子どもと一緒に住み身の回りの世話をする親と考えてよいでしょう。
子の監護権を一方の親に定めるのか任意で選択ができる制度にするのか、両親が隔週で交代し共同で監護をするのかなどが議論がされているようです。
また、これらの決定権をどちらの親に認めるのかも議論がされているようです。
一方の親だけに決定権を認めると、正当な理由がないのに子どもと相手の親との生活を拒むケースが考えられます。しかし、両方の親に決定権を認めると、一方の親が同意を得ずに子どもを連れ去ってしまう問題が指摘されています。

共同親権では、契約行為を代理できる財産管理権をどうするのかも問題となっているようです。
子どもが、携帯電話やアパートの契約を行ったり急に手術の同意が必要になる場合があります。このような契約行為の代理権を子どもと同居している親のみに認めるのか、それとも両方の親に認めるのか議論が行われています。
両方の親に財産管理権を認めると、同居している親が知らない間に子どもの契約が行われる可能性があり問題視されています。しかし、一方の親のみに認めると、進学などで意見が対立したときに対等な話し合いができなくなってしまう問題が発生します。

このように、共同親権をめぐってはさまざまな意見や問題が指摘されており、現時点では明確な方向性を示せなかったようです。
また、共同親権を認めても、複雑な制度となってしまうと理解ができていないまま夫婦の話が進んでしまう問題があります。できるだけ分かりやすい制度を作り、どのように周知するのかと言う問題もあるようです。
このような事情により、2022年8月中の中間試案の取りまとめを見送り、制度設計を整理し数ヵ月以内に中間試案の取りまとめを行うようです。
共同親権に対しては反対意見も根強く、共同親権を認める法改正ができるのかは不透明な状況です。

このような夫婦間の意見の対立は、離婚をしていない夫婦であっても発生する問題です。離婚はあくまでも夫婦間の問題であり離婚後も双方の親が責任を果たし、子どものために協力をする必要があるのかもしれません。
離婚をした夫婦も子どもにとっては両親に変わりありませんので、離婚後も元夫婦で話し合い子どもの教育方針などを決めていく必要があるでしょう。

===2023年8月29日追記===

離婚後の共同親権導入に向けて、要綱案のたたき台が29日に法制審議会の家族法制部会で示されました。

離婚後も父母双方に子育ての責務を課す共同親権を認める一方で、共同親権導入に慎重な意見も踏まえ単独親権の選択も幅広く認める「折衷案」が示されました。
今回のたたき台は「原則としては共同親権」とした上で、親権の判断にあたってはDVや虐待を念頭に父母関係や親子関係を考慮するよう明記されました。
DVによる恐怖などを盾に無理やり共同親権の合意を強いられないよう配慮され、親権と離婚の協議は別にする案が示されています。
また、親権の合意の過程に問題が発覚した場合は、親権者を変更できる仕組みも取り入れられました。
その他にも、合意がなくても最低限の養育費を請求できる規定が設けられたり、協議の早い段階で家庭裁判所が双方に面会交流を促せる権限が付与されました。
ただ、部会内の意見の隔たりが大きく要綱案の策定までには議論の曲折も予想されます。
今後の議論でどのような結論が出されるのか注目されます。

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